<aside> <img src="/icons/alert_pink.svg" alt="/icons/alert_pink.svg" width="40px" /> ケビンがスウに壁ドンする話
微量のエデエリ(雰囲気だけ)
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「気になる、気になるわ。どうしたら目を開けてくれるかしら。うーん、びっくりしたら思わず目を見開いちゃうものよね? 足音を立てないようにそーっと近づいて、わっと大声を出してみるとか……」
コン、コンと軽やかにヒールの音を踊らせて、ピンク色の髪の少女が談話室の中を軽やかに歩き回る。
その談話室には少女の前に一人、先客がいた。彼は突然やってきた少女の大きなひとりごとを遮ってよいものか、しばらく迷った末に、口を開く。
「──エリシア。なぜその話を僕の前でするんだい」
「あら! スウ、起きてたの?」
エリシアは空色の瞳を見開いて、両手をぱちんと打った。
エリシアほど人の気配に敏い人が、スウが眠っているか起きているか程度のことを分からないはずはないと思うのだが、彼女はあくまで、今知りましたというポーズをとる。彼女がそういった振る舞いをする理由は、そのほうが面白いから、なのだろう。
「起きてるよ。エリシア、驚かせたりしなくても、僕の目が気になるならそう言ってくれれば……」
「あーっ! だめよ!」
エリシアは慌ててスウの言葉を遮り、自らの両目をぎゅっとつむった。両手はストップ! と表すように前に突き出している。
「ただ頼んで見せてもらうのじゃあ面白くないでしょう?」
「……はあ」
スウの困惑をよそに、エリシアはスウを見ないように目をつむったまま、「作戦を立ててくるわね!」と言って、するすると器用に障害物を避けながら部屋から出て行った。
彼女の足音が遠ざかって行くのを聞きながら、スウは苦笑する。どうやらエリシアの遊びに巻き込まれたらしい。多少面倒なことにはなるかもしれないが、付き合ってあげてもいいかと思った。なにしろこの古の楽園では、時間だけはたっぷりある。
そして今ここでスウがどう思おうと、エリシアが『面白いこと』を思いついたなら、もはや他の者に拒否権はないのだということもまた、スウはよく分かっていた。