<aside> <img src="/icons/report_yellow.svg" alt="/icons/report_yellow.svg" width="40px" /> 抱きついたりする(二人がケビンに)
スウの能力をいつも適当に捏造しててごめん
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「スウ、大変です!」
慌てた声が少し遠くに聞こえて、スウは瞑想を止め顔を上げた。
神州の秋に似て黄金色の草木が美しいこの洞天は、スウが古の楽園の中で気に入っている場所の一つだ。その静かな洞天に現れた華は、何か白く小さなものを抱えて、スウのほうへ駆けて来る。
「華。どうしたんだい」
スウの座っている木の下へしゃがみ込んだ華は、あなたがここにいて良かったです、と息を吐いた。
「あの……いえ、まずこれを見てください」
そう言って抱え上げて見せたのは小動物だった。缶詰ーーではなく、犬。華は白い子犬を胸の前に抱いていた。彼女はきょろきょろと辺りを確認したあと、声を潜め、こう言った。
「たぶん、ケビンなんです」
「……、え?」
スウは思わず華を凝視する。華は至って真剣な顔をしていた。スウは困惑のまま華の顔から視線を落とし、小さき生きもののつぶらな瞳を見る。
「そうなのかい?」と子犬に訊いた。子犬は可愛い見た目に似合わず、低く唸る。それっぽい反応だと言えなくもない。
とにかく、華が嘘をついているようには見えなかった。スウは首を傾げ、状況を理解しようと考え始める。
「君の言うことが本当なら……ヴィルヴィの仕業かい?」
華は神妙な面持ちで頷いた。
「工房の近くで見つけたので、おそらくは。私も先ほど見つけたばかりで、伝えたのはあなたが最初なんです。ええと、その、エリシアやメビウスに見つかると大事になりそうで……」
それに楽園の記憶体やデータのことであれば、スウは詳しいほうでしょう、と華は続ける。確かに、モニタリングが仕事のクラインほどではないが、スウも記憶体の生成に関わった者として、分かることはあるかもしれない。スウが子犬のデータに『目を凝らす』と、それは確かにケビンのデータが元になっており、元の身体データに犬のアバターが重なっている状態に見えた。これをうまく解除できれば解決になりそうなのだが……。
スウは空間に手を差し伸べ、空気をひねるようにぱちん、と指を鳴らす。すると、ぼふん、と犬が大きくなった。